今年の初めにDevLoveで、サービスブループリントを描くためのツールであるUX Finderのワークショップがありました。参加した際にはブループリントも初耳なレベルで吸収するのが精一杯でしたが、社内で共有したり要素を取り入れたりして、だいぶ自分の中で整理できてきたのでまとめ。
サービスブループリントとは
Webやアプリの仕事に関わる中で、カスタマージャーニーマップの名前を耳にすることが多くなりました。先にカスタマージャーニーマップとサービスブループリントについて整理しておきます。
カスタマージャーニーマップ
複数のタッチポイントを横断し、ユーザーのサービス体験全体を可視化して理解を深めるためのフレームワーク。ペルソナごとにシーンや行動、感情、課題などをまとめます。ユーザーシナリオに近いです。
サービスブループリント
一方、サービスブループリントは、ユーザーだけではなくサービスの全体像を可視化したもので、その名の通りサービスの『青写真』。ユーザーだけではなく、顧客と直接接する担当者や、直接は接しないサービスに関わる担当者なども含めます。全体を見渡しサービスの流れに滞りがないか、何が問題であるか発見することができます。業務フローと違うところは、ユーザーの感情や体験が入ってるところかと思っています。
www.coprosystem.co.jp サービスブループリントを用いたWebユーザビリティ評価 - Think Social Blog
UX Finderとは
ヤフー株式会社のUI/UXデザインチームに所属している西森さんが卒業演習として作成された、サービスブループリントを描くことを支援するツールです。origami store に印刷して切って使える雛形がPDFで公開されていて、誰でもダウンロードできます。
UXデザインはツールが揃ってきたけれども、サービスデザインはツールがあまりないのでUX Finderは貴重なのだと主催の@chachakiさんから説明がありました。ワークショップは、そのツールを"素振り"して使ってみようというもの。
事前のお題
事前のお題として、『コンビニのレジ横にある挽きたてのコーヒーメーカー』をテーマにワークショップを行うので、購入した経験のない人は一度購入してみてくださいと案内がありました。
店員さんの工夫を凝らしたUIで話題のあれ。コーヒーが飲めない人も、可能ならコンビニで観察してもらうのもいいかもと。ワークショップでシーンが想像できないと設計できないからとの配慮でしょう。購入経験がなかったので、途中のセブンで購入してから会場へ。
状況設定
参加者は全員、株式会社ミッドマート事業戦略部の社員の設定。
会社情報や業界動向、ミッドマートが展開しているサービスの概要、店内マップ、ペルソナ、ユーザーストーリーマップ(お客さん/店員さん側)がインプットとして配られました。
チームビルディング
はじめに、名前の周りに関心があることや趣味など、自分に関するキーワードを書いた紙を使った自己紹介を行いました。
こういうワークショップでよくあるのが、発言力があったり前知識のある人が引っ張っていってしまい、なかなか全員参加にならないこと。今回はめずらしく、うまくバランスがとれた印象だったのですが、ここの導入がちゃんとしていたからだなと思います。
ステークホルダーの洗い出し
チームの中で、サービスに関わる人の共通認識を持つため、ステークホルダーマップを作ります。フロントサイド / バックサイド2つの円を描き、思いつく登場人物を付箋で貼っていきます。
- フロントサイド
- 中心に近い内側の円
- お客さんと接する人(例:回転寿司屋さんで案内したり味噌汁を運んできたりする人)
- バックサイド
- 外側の円
- お客さんと接しないけど関わりのある人(例:回転寿司屋さんの店長、ネタをお店に運んでくる人)
登場人物が出せたら、お互いにどういう価値のやり取りがあるのか線でつなぎます。フロントサイドを補助しているのはバックサイドの人である可能性もあります。
軸となる人は誰か?
フロントサイド、バックサイド共に軸となる人を抜き出します。今回のテーマ『コンビニのレジ横にある挽きたてのコーヒーメーカー』だと、裏でコーヒーサービスに関わっている人は誰か? ビジネス的な制約事項を考えながら、変えられそうなところを抜き出します。
現状のブループリント(As Is)を描く
配布されたユーザーストーリーマップから、現状のサービスの流れを把握します。まず、以下の軸を置きます。
- 気持ち
- 行動(お客さん)
- 行動(フロントサイド)
- 行動(バックヤード)
- もの/システム
続いて、お客さんの体験、気持ち、サービス提供者側の行動、もの/システムをカードに書き時系列に並べていきます。
行動を書く際には「動詞で書く」ということに気をつけながら書いていきました。バックヤードに関しては、コーヒーサービスにはバックヤードがないため今回は書きませんでした。
理想のブループリント(To Be)を描く
現状のブループリントから、課題となりそうな箇所を見つけ、改善策のアイデアを出していきます。現状のブループリントの下側に、改善後のサービスのブループリントを描いていきます。
アクションが多い箇所には問題がありそうだという視点で課題を見つけていきました。ここで議論となったのが、アイデアのジャンプをどこまでさせるかということ。あまりジャンプさせるぎると、解決策になっていなかったり、また課題が出てきそうになるので難しいところ。
まとめ
1日の中で、既存サービスの現状把握のためのサービスブループリントと、新たに提案したサービスの検証のためのサービスブループリントを体験しました。
参加時にはサービスブループリントの概要しか知らない状態でしたが、ツールがあることで理解が進んだように思います。ツールを通じて、サービスブループリントの描き方を知ることができました。サービスのステークホルダーを巻き込み、専門的な知識レベルの違う人達と共通認識を得ながら進めていくにはこのようなツールが有効かと思いました。
UI設計をしていると、UIで解決できないものであったり「そもそもユーザが求めている機能はそれでいいのか?」という疑問に当たります。カスタマージャーニーマップでユーザー体験の理想が描けても、今度は業務フローの課題が越えられなかったり、要素はより複雑で業務の役割をなかなか切り離せなくなってきていると感じます。。。