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ある日のわたしとユニコーン

※ 新型コロナが流行る前に海外に行ったときのぽえむ供養です。

ウクライナのカフェでユニコーンと会うイラスト

わたしのキャリアが10年を越えたくらいのある日、海外のソフトウェア開発チームと仕事をする機会に恵まれた。ビジネスアナリストからアーキテクト、UXデザイナーまでが揃っているアジャイルスクラムなんて当たり前のクロスファンクショナルチームと。

サービスの設計も中盤に差し掛かかり、これからやることの焦点を絞ろうとしたあるとき、日本チーム内の誰かが、海外チームのUXデザイナーについて言った。

「彼がやってるのはサービスデザインだから、フィニッシュワークなんて頼めないよ。」

何かすれ違っているのかも…。念のため彼にデザイナーとしての責務の範囲を聞いてみると、もちろんフィニッシュワークまでやるし、HTMLプロトタイプまでなら自分が作ってしまう、ということだった。そのあと一緒にやったユーザビリティテストの設計や半構造化インタビューはとても柔軟で、嘘をついているようには見えなかった。向こうの大学でも教えていたりするらしい。嗚呼!このひとはユニコーンかもしれない!

「日本ではそういうデザイナーのことをユニコーンと呼ぶんだ。めったにお目にかかれないからなんだけど...あなたはまさにユニコーンだね。」というわたしに、「そんなことを言ったら、うちのUXデザインチームはみんなユニコーンだよ!」と笑われた。

どういう巡り合わせか、そのあと彼らの国のオフィスに行く機会に恵まれ、年に2回しかないという全ブランチのオフィスにいるUXデザイナーが集まるmeet upに混ぜてもらえた。新型のコロナウイルスがにわかに騒がれるなか、カウンターの隅でりんごジュースを啜るどう見てもアジアから来たわたしに、地球の裏側はどんな様子?と興味深く話しかけてくれた。自己紹介をすると、「きみも黒い服だね。デザイナーが黒い服を着がちなのは世界共通なのかも!」と盛り上がったのが、受け入れてもらえたようでとても嬉しかった。

彼の同僚は、日本でワークショップをした際になかなか意見が出ずに困ったのだという。日本のひとはシャイなのかな?どうやって日本のチームではファシリテーションをしているの?と聞かれたので、気をつけてることなんかを話した。彼らの文化のなかでは、ワークショップの参加者は前のめりで、静かにしてもらう方が大変なんだとか言っていた。同じフレームワークでも、背景や文化が違えば工夫が違った。慣れない英語で、もっと深淵に潜れないことが悔しいほどに、聞いてみたいこと、議論してみたいことが後から後からたくさん溢れてきた。所属ではなく、チームの中で果たしている責務で自分を語ることができれば、たとえ地球の裏側でも、同じ話題で繋がれた。専門性は国と言語を越えるんだと思った。

自分たちのUXデザインチームのメンバーは、それぞれ異なる"Super power" を持っている。あるメンバーはプロダクトデザインが得意だし、彼女なんかは全領域をカバーしてるんだとその場のメンバーを紹介してくれた。C#をはじめ、JavaPythonなど様々な言語を使いこなしていたエンジニア出身のUXデザイナーもいた。エンジニアをやるうちにデザインのことが気になりはじめ、マネージャーと相談してUXデザイナーに転向したのだという。はじめて会ったのに、もちろんきみも"Super power" を持っているはずだとも言ってくれた。

彼らのチームは、専門領域からみても、チームの視点から見ても、謙虚さと尊敬と信頼があって、透明性が高かった。こういうコミュニティは彼らの国でも少なくて、そんな環境で働けている自分はとても幸せだ、いつか自分もそういうコミュニティを作るんだと話してくれた。「ここはユニコーンの村だね!」と話し込むうちに、いつの間にか時計は24時を回っていた。

明日は日本に帰らなければいけない。後ろ髪を引かれつつも帰りの挨拶に回るわたしに、「会えて嬉しかった。ここでの出会いは、きみのデザイナー人生の中できっと貴重な経験になり、きみを助けるだろう。お互い成長しようね。」と丁寧な激励の言葉をくれた。みんなとぎゅっとハグをして、薄暗い深夜のカフェを後にした。

ちょっとだけ、理想のチームを覗けた気がした。価値観はきっと、人との関わりからもできていく。お互いが影響を及ぼしながら少しづつ輪郭がはっきりしてくる。いつか、また彼らとデザインとテクノロジーの話がしたい。