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産業技術大学院大学「人間中心デザイン」を終えて(ポエム)

先日、産技大の「人間中心デザイン」の最後の授業を終えた。昨年の9月から2末までの半年間で130.5時間(選択しなかった選択科目があったため130.5/144時間)のカリキュラムを1度も休まず消化した。

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これまで自分が目を輝かせて読んでいた本の著者や第一線で活躍する先生方から指導を受けたこと、ディレクター、マーケター、デザイナー、PM、エンジニア、立場は違えどHCDというキーワードで繋がった優秀な同期達と真剣にテーマに取り組めたこと、すでに業務に取り入れられているOBの方々からのサポート、どれも金額には変えられない価値があった。

ポエムちっくだが、半年前自分が何を考えて学び始めて、何を学び、考えたのかまとめておきたいと思う。

自分は何をしている人か

現場の技術サポートで設計したりJS書いたりしてるときもあれば、上流からヒアリングしてUI設計してるときもある。自社サービスにも関わるし、受託もやる。10000時間の法則と言われるように、高いレベルのスキルを身につけるためには絶対的な時間が必要だ。両方追いかけている限り、かける時間が分散するためガチのフロントエンドエンジニアには技術力で劣るし、ガチのUIデザイナー、UXデザイナー達には勝てない。だけど技術とデザイン(設計)をブリッジすることに価値があると思って両輪で仕事をしている。

何故産技大に行ったのか

より一次情報に近い専門家から体系的に学ぶため

UCDやHCDは目新しいものじゃない。新人時代にも「ちょっとペルソナ作ってみてよ」というような業務はあった。ここ数年、UXという言葉がバズワードになって、UX関連の情報が百花繚乱の状態になった感があり業務で使うテンプレートも増えた。個人的に、自分が理解しきれないままテンプレートに振り回されている感があり、うまく成果が出せないことに悩んでいた。POの大事なプロダクトをサポートするのにハッタリで進めたくなかった。何がどう繋がっているのか、本質は何なのか、より一次情報に近い第一線の人たちから体系的に学びたいという思いがあった。

足りない経験を素振りで補うため

本を読めば、学べば知識は増える。でもそれでは「知っている」だけで身につかないし、そんな状態では業務を自信を持って引っ張れない。そんな業務は待っててもこないし、業務に入れられたとしても、フルスウィングで頭からお尻まで何の邪魔も入らずできるなんて無理だと思っていて。私にはもっと素振りをして体感を身につける場が必要だった。いくら失敗しても格好悪くてもいい、その上ただがむしゃらに振るのではなく学びも踏まえた素振りの場所が産技大だった。

現場も納得できるプロダクトにコミットするため

これも個人的な思いになってしまうが、現場でエンジニアが動くのであれば、誰のためにこのプロダクトを作っているのか、何を実現しようとしているのか疑いを持って開発して欲しくなかった。手段ではなくチームが「ものづくり」にコミットするために、私自身の思い込みではなくユーザーを見すえた設計の必要性を感じていた。

何を学び、何を得たか

主軸となるHCDのプロセスとその手法

ユーザー工学やUCD、HCD、サービスデザインに至るまでの歴史から、HCDプロセスの全体像、ユーザーを理解するためのヒアリング設計からペルソナづくり、ユーザーの価値とビジネスの価値に基づいたサービス・プロダクトを設計するための構造化シナリオ法、UIの使い勝手を検証するためのユーザビリティテスト、インタビュー設計、アイデア発想…必要な基礎要素がとにかく詰まっていた。これまで断片的だった知識に一本筋が通ったような気がする。手法や知識についてはこれから復習しながらまとめていくことにする。

学びの態度

学ぶことは技術ではなく、態度。最後の一番大きなワークで浅野先生が口をすっぱくして言っていた。失敗してもいいから動いてみること、外化してみること、そこからフィードバックが返ってくる。今まで自分に足りなかったものだ。「師匠の声が聞こえなくなるまでに随分かかった」と先生が言っていたが、講義を終えてまさにその声が聞こえるようになった。それくらいインパクトが強かった。以下、名言集抜粋笑

  • プロ勉強家にはなるな、勉強をすることとは問いを立てることだ
  • 経験をしないと省察はない、Try and Error省察を繰り返す
  • 仕事のスピード『フィジカルスピード』『思考のスピード』『判断のスピード』日頃から考えてる人は、早い
  • 間違ってもいいから発信する、情報は出すところに集まる(外化)
  • HCDの基本は、いかに人を洞察できるか。質的調査はヒューマンスキルだ。
  • 性善説で書くな。そうやって生きているのか?そんな生活をしているのか?そんなことすらちゃんと見ていないのか。もっと物事を懐疑的にみよ。

自分の弱み

座学もあったが、実践を重視していることもあってワークが多かった。全然企業文化やバックボーンが違う人たちとワークしたら、相対的に自分の弱みが見えてきた。

  • 点に集中して考えすぎる
  • 上記ゆえに判断スピードが遅い

チームに一人は細かな違和感を指摘する人が必要とフィードバックを受けたが、同じような性質の人と組むと停滞してしまうことを知った。判断スピードをすぐに上げることは難しいけど、そこを補完してくれるメンバー(線で見て荒くてもすばやく判断をしていく人)がいればかなりうまく回った。

さいごに

半年間、毎週金曜日の終業後と土曜日は毎週のように品川シーサイドに通う日々だった。自費でも行かせてくださいという完全なる私の我侭で、金曜は恐る恐る定時前に上がっていたのだが「体系化された基礎を学ぶのも大事」と何も言わずに帰らせてくれたボスと同僚には感謝している。

授業KPTをやってみたり、授業外で業務後毎日のように集まって議論したり、予習のために休日を潰して輪読やリバース構造化シナリオをやってみたり、忙しい中そこまで一緒にできた貴重な仲間たちにも感謝しきれない。正直、かなり影響されたし、引っ張ってもらった。

これから

『UXはビジネスマナーだと思っている』と同期が言っていたのが印象的だった。ユーザーのことを考えないプロダクトがあるか?と。これからも、サービスが生まれ、新陳代謝を重ねる現場に立ち会っていたい。HCDはそのための共通言語だと思う。

授業の中で、どの先生だったか「このプログラムを終えると川の向こう岸に渡ってしまう」ということを言っていた。確かに、渡り方は知れたし、向こう岸は見えるようになった。対岸には実践者がみえる。でもまだ川が渡れず膝まで水に浸かって対岸を見ている。ここで学んだことは、ほんとうに始まりにすぎない。これから実践していく人こそが、産技大で学んだことを自らの血肉にしていくのだと思うから、恐れず前に進んでいきたい。まずは、復習と、業務に小さく取り入れることから。