人間中心デザインはじめました - Day1『人間中心デザイン入門』-
産業技術大学院大学の平成27年度の履修証明プログラム「人間中心デザイン」を受講できることになりました!
今年も募集開始から定員までたったの3日という驚異の埋まりっぷりでしたが、申込数が定員に達したことを確認してから当日の消印で出すという諦めの悪さを見せつけ、ギリギリ滑り込み。最後まで諦めないってだいじ。
開講初日の11日(金)は、プログラムについての諸注意と、千葉工大の安藤昌也教授から『人間中心デザイン入門』の講義がありました。
すでに去年の履修生のかなり良いまとめが公開されてますが、個人的まとめも兼ねて残していきたいと思います。
プログラムについて
この履修証明プログラム『人間中心デザイン』は今回で5期目。これで約150人卒業生が誕生することになるそう。履修証明をゲットした際には履歴書の学位の欄にかけるとのこと。Certification Program と呼ばれ、アメリカ西海岸では普通のことらしいです。
なるべく多くを経験するための工夫
- 人間中心デザインはプロセスであり、サイクルになっている
- 演習をしていると1サイクルしか回せない
- 理論を先に学び、机上で1回目、実戦で1回目のサイクルを回すように構成されている
注意事項など
- 学生用のシステムでいつでも授業の録画を観ることができ、欠席した場合はビデオでフォローアップできる
- Adobe系などのアカデミック版が買える!
- ハッシュタグは #aiithcd2015
- 省察という名の懇親会があるので飲み会の代金のやりくりが大変ですw
受講生について
一人づつ受講者の自己紹介をする時間がありました。Webディレクターやプロデュサーの方が多い印象でしたが、デザイナーやフロントエンジニア、UXデザイナーの方も。 年齢層も、新卒からSIerで長年勤めてきた方など、予想以上に幅広かったです。
人間中心デザイン入門
安藤先生の経歴
- 東芝のデザインセンターの体験コンセプト
- 「利他的UX」の基礎研究
- アクセシビリティの設計。ISOの策定に関わっている
- なかなか使われないもの→いかに使われるものにするか
- 新しい技術をどうアダプティブな形にできるか
HCD導入
- 近年UXという言葉が流行しているが、UXという言葉がいきなり出てきたわけではない
- ユーザー工学の先人は黒須正明先生、ドナルド・ノーマンの本の中にも黒須先生に関する記述がある
- PCが出てきたからこそ、歴史の背景の中で必要になってきた分野
- 手法は手法だけ存在するわけではない、手法だけ真似ると必ず失敗する
- 手法が生まれた背景とそのプロジェクトにおける必要性が一緒じゃないので合わない
- なぜこういうものが必要になったかを語れないと始まらない
- なぜその手法が出てきたのかということを理解していれば、新しい手法が出てきても対応できる
- 今回の講師のうち2人はノーマンの孫弟子。だからこそ背景がちゃんと押さえられる
なぜ使えないシステムになってしまうのか
巨額を投じたアメリカ合衆国の国境警備システムが、結局使えないシステムとして廃止になってしまった問題に迫ったドキュメンタリー(TBS「CBSドキュメント:国境警察のお粗末」)を鑑賞して参加メンバーで意見を出し合いました。ドキュメンタリーの中では主に以下のようなことが言われていました。
- 誰もすり抜けられないシステムをすみやかに開発しろ
- 8ヶ月で建設を約束(しかし着工から3年で45キロしか完成していない)
- 標準的な既製品の設備を考えていた(砂埃の環境という環境が考慮されておらず、ノートPCが使えなかった)
- 設置さえすればOKと考えていた
- 現場にヒアリング(国境で何がおこっているか)していなかった
スケジュールが最優先な割に要件もハードルが高くて、現場にヒアリングしないというどこかで聞いたことのあるような話でした…。
なぜ使えないシステムになってしまったのか
- そもそもそれで合っているか(専門家に必要な視点)
- そもそも問題は何か
- そもそも実現方法はあっているか
利用状況を把握してくると、そもそも違うんじゃないかというのがわかってくる
- ユーザーをどう見るか(利用状況 … CONTEXT OF USE)
- 現場のヒアリング(意見とか考え)・観察をしていなかった
- どういうことをやっているのか(行動)
- どのように使えるか、シーンを考えていない
- どうすれば検挙率が上がるのか
- 現場で計画していたデバイスが使えるかどうか、プロトタイピングしていない
- もっと早い段階、デバイス生産前
- どういう環境で使うか
- 車に乗っている、砂埃の環境を走る、雨の日/晴れの日はどうか?
- コンテキストは時間によって変わる。そこを集約するためにヒアリングをする
- 現場のヒアリング(意見とか考え)・観察をしていなかった
「利用状況」というのはHCDの中で重要な言葉。利用状況を知ることが人間中心設計のキモである。 ニーズを知るために観察やインタビューをしているわけではない。コンテキストを把握できれば、手段は何でもいい。
現場へのヒアリングや、プロトタイピングの話など、利用状況に関わる指摘がたくさん出たのですが、『そもそもそれで合っているか』という視点が一番専門家に必要な視点だそう。
人間中心設計の歴史的背景
- 古代まで遡ると、もともとはオーダーメイド
- これまでは技術の利便性があったのでユーザーとコミュニケーションしなくても製品が成り立っていた
- 人間工学には2種類の言い方がある
- イギリス:エルゴノミクス(エルゴは労働、働くという意味)
- 仕事として使うには、疲れないことが大事という考え
- アメリカ:ヒューマンファクタ
- 遊び車のない電力計…コストを重視した結果人間に見にくい結果に
- 人間の認知をベースにミスが起こらないようにするという考え
- イギリス:エルゴノミクス(エルゴは労働、働くという意味)
- 過去の事件
- 北欧、労働災害をどう抑えるか。人と労働の問題。参加型デザイン、ワークショップの源流
- ISOは規格
- コピー機はヨーロッパ優位だった
- ISOに沿っていないとヨーロッパで労働争議になる恐れがあると思われていた
- リコーがいちはやく取り入れ、人間中心推進機構が作られた
- ISO13407とISO9421-210の違いはUX、サービスが入ってるかどうか
- 「設計」という言葉のイメージが日本では局所的なので、より大きくデザインという表現にした
省察という名の懇親会
社会人の学びは「振り返り」にあるということで、有志で飲み会が開かれました。そこで安藤先生が話されていて印象に残っていたのが、KPIドリブンはいけないという話でした。「ユーザーに聞きましょうといってABテストをしたりするけど、それは人間中心デザインではない」と。ABテストをすれば短期的なKPIは達成できるかもしれませんが、収穫逓減の時期(経済用語)が必ずやってくるとのこと。Web担の以下の記事でその話がありました。
1日目を終えて
すごくワクワクしました!(小並感)。問題は飲み会代と体調管理。背景の違う人たちが集まって、仕事以外でプロジェクトをするということは大変なこともたくさんあるから大人にならなければいけないこともあると安藤先生からコメントがありました。。。まずは最後まで走りきることを目標に、頑張っていきたいとおもいます。